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某IT系企業の知財担当者。
社会人7年目(2013年現在)。
学生時代に一念発起して、弁理士の勉強を開始し、翌年、見事合格!
さらに翌年、大手電気メーカーの知財部に就職し、特許権利化を約5年間担当。
2012年、新天地を目指して、IT系企業の法務部に転職!
このブログを通して、知財部員の生き様が垣間見えれば幸いです。
ご意見、ご感想、相互リンクの申し出などお気軽にご連絡下さい!
(なお、確認するまで時間がかかるおそれがあるので、直にブログにコメントして頂いた方が確実です。)
e-mail:tizaibunositappa■yahoo.co.jp
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■twilog
ニュースのソースとなっている「 知的財産政策に関する基本方針」 及び 「知的財産政策ビジョン」 によれば、
①従業員がした職務発明は、使用者(会社)に帰属にする(英国、フランス、ロシア、オランダ、 中国タイプ)
又は、
②職務発明の取り扱いについては、従業員と使用者との契約に委ねる(アメリカタイプ)
に職務発明制度を変更するという案が出ているようです。
皆さんご存知のように、現状の職務発明規定では、「職務発明 は原則従業員帰属で、会社に承継させる場合には相当の対価を払わなければならない」となっていますので、制度の見直しによって、発明者の権利が弱められてしまうという捉え方もできます。
ここで私見を言わせてもらうと、今の日本のように裁判で高額な発明報奨が認められるのは、やはりクレイジーな状況だと思うので、上記のように制度を見直すことでそれがなくなればいいことだという気がします。
企業の従業員は、会社の資金、設備、人員があってはじめて研究開発ができるわけだし、発明を製品化し収益化するにあたっては生産管理、営業、マーケティング、会社のブランド力などの貢献が多大なわけです。
いくら素晴らしい技術を発明したからといって、その発明だけで製品が売れる(金が儲かる)と考えるのは、多くの場合間違いでしょう。
加えて、会社の従業員であれば、基本的には研究がうまくいこうがいくまいが、安定的な給料が得られるという立場にあります。
これらのことを考えると、会社の従業員である以上、研究開発に対してほとんどリスクをとっていないことになります。
低いリスクしかとってないにも関わらず、大きなリターン(多額の発明報奨)が得られるというのは、どう考えても道理に合わないでしょう 。
そして、発明以外の貢献(発明報奨の対象にならない人の貢献)が多大にあるにも関わらず、発明者だけに高額な対価を支払うというのは公平性を欠いています。
(もちろん、ある程度の対価は必要だとは思いますが。)
この職務発明制度の見直しに対して、企業の搾取につながるとか、発明者の国外流出を招くみたいな懸念を煽っている論説を見かけますが、上で述べた理由から発明者の貢献を過剰に評価しているし、的外れな指摘じゃないかと思います。
そもそも、現状多くの企業では、入社時に職務発明を自動的に企業に譲渡するような契約を従業員に結ばせているので、職務発明制度が変わったからといって、それほど大きな影響があるとは思えません。
こちらの記事で城繁幸氏が指摘しているように、全体的な報酬体系の中に発明の対価を組み込み、企業と従業員との契約に委ねるというのが時代の流れに合っているのかなという気がします。
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前回は、企業内で権利化業務の内製をやることについてのいきさつについて書きました。
しかしながら、よくよく考えてみると、会社内で権利化業務を内製することについても一定の「合理的な」理由があることに最近気が付きました。
自分は今のところ2つの理由があると思っています。
(行き場を失った人員を有効活用する、という理由はさておき。。)
まず、理由の一つ目としては、大企業が出願したい件数を事務所だけではさばききれないという問題があるからだと思います。
大企業ともなれば、年間にかなりの件数を出願します。
IP FORCEというサイトによれば、2012年の企業別特許出願件数ランキングにおいて、1位のパナソニックが8925件、2位のキヤノンが7187件、3位の東芝が6349件となっています。
20位のコミカミノルタでも1752件出願しています。
つまり、大企業と呼ばれるような会社は、年間にして数千件特許を出願していることが分かります。
仮に年間2000件特許を出願する会社があるとして、それを全て事務所に外注するケースを考えてみます。
事務所の明細書作成能力には事務所の規模などによってばらつきがありますが、ここでは一つの事務所で大体月10件(年間120件)明細書を作れると仮定すると、2000件の出願をさばくのには、事務所が約17必要です。
ただ、実際には月10件出願を処理できる事務所はそこそこの大手であり、17すべての事務所を大手で揃えるのは大変そうなので、10件大手で、残りを小規模の事務所(月5件処理可能)に依頼すると、事務所が24必要です。
数だけ見ると24揃えるのは不可能ではなさそうですが、大体大手や評判の良い特許事務所は同業界の他社がすでに使っていたりするので、コンフリクト(利益相反)の問題から、なかなか良い事務所を確保できなかったりするので、実はけっこう難しいと思います。
そう考えると、特許を年間数千件単位で出願するような企業は社内で明細書を作らざるを得ないのもうなずけます。
理由のもう一つは、社内で明細書を読める人員を育てることが難しくなるということです。
権利化の仕事に限らず、訴訟、侵害警告、特許売り込み対応などの場面では、明細書を読んで特許の権利範囲や有効性を評価することが不可欠です。
それには、やはり権利化の経験が無いと、深い読み込みが難しいと思います。
従って、権利化の仕事を事務所にアウトソースしてしまうと、明細書をちゃんと読める人員を自前で育てることが難しくなり、そのような人材を外からとってこなければならなくなります。
少人数なら特に問題ないでしょうが、それこそ大企業の知財部くらいの人数を揃えようとすると、かなり大変そうです。
以上のように、企業が権利化業務の内製をやることは、このような2つの合理的理由があるのではないかと思います。
なお、内製のメリットとして、企業内の人間の方がより社内の技術に通じており、開発者に張り付くことができるので、よりよい明細書が書ける、という点を挙げる人もいるかもしれません。
(別の言い方をすると、事務所は技術についての理解が浅いので明細書を書かせるのは不安であるという意見です。)
たしかに、発明発掘については基本的に社内の知財担当者がやるべきだと思います。
(弁理士を四六時中開発者に貼り付けておくわけにもいかないので。)
しかし、事務所に対して技術説明をしっかりする、同じ技術についての出願を継続的に依頼するなどすれば、技術内容を理解してもらうことは十分に可能なはずです。
(もちろん、実力のある弁理士をつかまえておく、という大前提がありますが。)
というわけで、企業が権利化業務を内製化する合理的な理由について述べてきましたが、上記のような理由は大企業でないと発生し得ないので、やはり、中規模以下の知財部においては、内製をやる意義というのはあまり感じられません。
権利化業務は基本的に特許事務所にアウトソースをし(ただし、事務所からのアウトプットは的確にチェックできるようにする)、必要最小限の人数でその他の知財業務(発明発掘や係争対応など)にフォーカスする、というのが知財部門としての理想の姿なのではないかと考えています。
■関連
・なぜ大企業の知財部では権利化業務を内製するのか?
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ということで、今回は、なぜ企業の知財部で権利化業務を内製するのか?、果たしてそれは理想の姿なのか?ということについて、自分の考えを書いてみようと思います。
(なお、今回の話は自分の想像をもとに書いているので、不正確な内容が含まれている可能性があることをあらかじめお断りしておきます・・・。)
大企業になると、知財部員だけで数百人もいます。
このような大企業では、特許事務所を使わずに、社内で権利化の仕事(明細書作成、中間処理など)を完結させること(以下、これを内製と言います。)を実践しているところが多いと聞いています。
このような企業は、ある意味、会社内に特許事務所を持っていると言えます。
(私も前職(某大手電機メーカー)では、意見書や補正書を作ったり、下手な明細書を書いたりしていました(笑))
では、何故大企業の知財部はあれほどの人員を抱えて、内製をやっているのでしょうか?
やり方としては、権利化業務の大半を特許事務所に任せ、知財部の仕事を発明発掘や渉外対応などにフォーカスするという考え方もあります。
この場合、良い特許事務所をつかまえることさえできれば、よりコンパクトな組織で、且つ同等(もしくはそれ以上)のパフォーマンスを出すことができるはずです。
そこをあえて内製をやっているのは、大企業の知財戦略によるところなのか?
しかし、自分の考えでは、あながち当初からそのような戦略があったわけではなく、以下に述べるような成り行き上そういう姿にならざるを得なかったのではないかと思っています。
自分は若造であるので、大企業の知財部がいかにして現在の組織体制になっていったのかの経緯を実際に知っているわけではありませんが、おそらく下記のようなプロセスをたどったのではないかと推測します。
今でこそ知財職は人気がありますが、昔はかなりマイナーな仕事であり、開発から一線を退いた人の(もっと悪く言えば、開発部門にいられなくなった人の)受け入れ先になっていたという歴史的経緯があると聞いています。
そのため、知財部に人が入ることはあっても、知財部から他部署に人を出すというのは難しいわけで(そもそも開発を追われて知財部にきているわけですから)、どんどん人が増えていったと考えられます。
もちろん、それ以外にも理由はあり、一般論として、放っておくと組織は自己増殖するものなので、企業の成長と共に知財部の人員が膨れ上がっていったのでしょう。
このようにして、本質的な仕事量に対して知財部の組織はどんどん大きくなっていったのですが、人がたくさんいるにも状態にもかからず、提案書を特許事務所に流すだけの仕事をしていたら、知財部は何をやっているんだという話になってくるわけです。
ましてや、知財部がライセンス収入などで目に見える収益を出していない場合には、さらに風当たりが強くなったでしょう。
そこで、「内製」が考え出されたのです。
明細書作成や中間処理などを知財部内で行うことによって、事務所に払う料金を減らせば、知財部によってコスト削減がなされているという名目が立ちます。
これは、知財部のトップの立場になって考えてみると、非常に魅力的なプランだということがわかります。
なぜなら、ライセンスや権利行使で収益をあげるのはすぐには難しいし、将来的に可能かどうかも不確実です。
また、知財部の人を他部署に異動させて人員を減らすことも上述の通り難しいです。
(解雇するのはなおさらです。)
一方、内製を導入すれば、この場合においては、「確実に」コストカットという成果を出すことができるのです。
(加えて、社内だけで権利化ができるほど進んだ知財部だ、と言うことができ、社内外に非常に聞こえが良いです。)
かくして、知財部のトップは、権利化業務の内製を始めるように(すでに、細々と内製をやっていた場合には、内製の比率を引き上げるように)、下々に命じることになったわけです。
以上をまとめると、内製をやるために必要だから知財部に人をたくさん増やしたのではなく、先に組織構成ありきだった。
逆に、このような組織構成を正当化するために、権利化業務の内製によるコスト削減という方策が編み出された、というのが私の考えです。
というわけで、私は、内製というのはふくれあがった人員を削減できないことを前提としたときの次善の策に過ぎず、必ずしも知財部の理想のあり方ではないのではないかと考えています。
しかしながら、一方で、よくよく考えてみれば、ある条件においては会社内で権利化業務を内製することに一定の合理性はあるなぁということに最近気が付きました。
次回はそれについて書きたいと思います。
■関連
・なぜ大企業の知財部では権利化業務を内製するのか?2
・大企業の知財部と新興IT企業の法務部はどう違うのか?2
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(個人的に非常に興味のあるトピックですので)
テーマは、「IV(インテレクチャル・ベンチャーズ)は何を目指しているか?」についてです。
IVは、投資家から集めた資金を基に、特許を収集し、それをライセンスアウトして収益を上げるというビジネスモデルをとっています。
特許収集については、細かく分けると、以下の3つの態様に分類されます。
・1号ファンド
(すでに権利化された特許を買い取る)
・2号ファンド
(IV内で発明・出願を行い、特許を取得する)
・3号ファンド
(大学等の研究機関と提携して出願・権利取得)
このうち、1号ファンドについては、巷のトロールや特許流通会社がやっているのと同じ方法で、特に目新しい特許取得の手法ではありません。
キーになるのは、2号ファンドです。
(3号ファンドの一部を含めてもいいかもしれません)
これは、IVが自ら特許生産能力を持っているということです。
前回もちらっと書きましたが、この特許生産能力こそが、IVが他の特許流通会社やトロールと一線を画す要素になっています。
しかも、IVはノーベル賞級の科学者を多数擁しています。
この高い発明能力を活かせば、技術動向を先読みして出願していくことも可能でしょう。
つまり、高度な先読み能力を駆使して、有望な技術分野に先回りして特許取得ができるわけです。
これは、1号ファンドのような、すでに権利化された特許を他から集めてくる方法では、難しいことです。
そして、もし、その先読みが尽く的中すれば・・・。
今後主要となる技術分野の特許ポートフォリオを、IVが独占するという可能性が出てきます。
そうすれば、企業が事業をするにあたって、IVからのライセンスを避けて通れない・・・。
そのとき、IVは特許を通じて世界を牛耳ることになるのです。
それは、最早トロールなど超越した存在であると言えるでしょう。
多くの専門家がIVに対して、得体の知れないイメージを抱いているのも、上記のようなシナリオの可能性を感じているからに他なりません。
まあ、もちろん、そう簡単に技術動向の先読みができるわけは無く、かなり実現性の低い話ではあります。
しかし、私はミアボルト氏はそれを本気で目指しているのではないかと思います。
もしそうだとすれば、とんでもなくスケールのでかい話じゃないですか!
う~ん、しびれる!
(まあ、企業の知財部員としては、呑気に感心してる場合じゃないんでしょうけど(笑))
今後もIVの動きについて、フォローしていこうと思います。
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実施可能性は高いが、検証性は低い特許は、価値のある特許だと言えるのでしょうか?
性善説の立場に立てば、これも非常に良い(◎)と言えると思います。
この特許は、自社が実施するところがちゃんと取れています。
一方、他者も特許調査でこの特許を認識していて、実施をするときはちゃんとライセンスを受けにきてくれる、又はこの特許に抵触しないように設計変更してくれます。
・・・、本当でしょうか?
世にある全ての企業が、実施に関係する全ての特許を把握しているとは到底思えません。
そうすると、知らず知らずのうちに特許侵害をやっている企業だってあるでしょう。
そもそも特許を侵害してもお構いなしに実施を続ける企業だってあるはずです。
模倣品業者などは、その典型です。
また、権利者の立場からしてみるも、他者がその特許を使ってるのかが分からないから、特許を侵害されていても、その事実に気づくことができません。
仮に怪しいと思われる相手を特定しても、侵害の事実を立証することが困難なわけです。
以上のようなことを考慮すると、このような特許に価値があるかどうか、だんだん怪しくなっていきます・・・。
とは言え、依然としてこのような特許(実施可能性は高いが、検証性は低い)を権利化する意義はあると思います。
特許に対して真面目に取り組んでいる企業には、けん制効果が得られるわけですから。
問題は、その価値をどう見積もるか、あるいは、そのような特許を取得するためにどれくらいのリソースを割くかということなんです。
実務レベルにすると、例えば以下の様な問題になります。
・検証性の低い発明をどのくらい出願する?
・どの出願に対して審査請求をする?
・審査の過程で、特許性を出すために、検証性が無くなるような補正をしなければならない場合はどうする?
(無理だと思ったら、そういう補正をする? or わずかな可能性にかけて、審判(あるいは裁判)に訴えてでもがんばる?)
・登録になった場合、権利期間が満了するまで持っておく?
・それらの、費用対効果は?
・・・と、ここまで長々と書いてきましたが、このようなことを仕事の途中に悶々と考えています。
もちろん、私はこの問いに対する答えを持っていません。
何らかの知見を持ってらっしゃる方がいたら、是非、ご意見頂きたいです。
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検証性の無い特許の価値は?
それは、ある特許または出願に対して、その価値をどう見積もるかということです。
まず、話を簡単にするために、特許をカテゴライズしてみます。
一般的に、特許のクレームには、検証性(他者がクレームに係る発明を実施していることを証明するための容易性)が高いことが望まれます。
また、当然のことながら、クレームが、自社が(好ましくは他者も)実施をする範囲をカバーできてなければなりません。
この2つの観点からマトリックスを作ると、世にある特許は、大きく4種類に分けられることになります。
(この表の実施可能性は、他者の実施も含む概念です。)
上記のマトリックスのうち、右上に属する特許は非常に良い特許だと言えます。
(もちろん、無効理由が無ければの話ですが)
自社、他者ともに実施をする可能性が高く、仮に他者が特許侵害をしてきた場合は、簡単にそれが証明できるわけですから。
逆に左下に属する特許は、誰もやらないし、検証性も無いわけだから、価値の無い特許です。
コストを抑えるために権利放棄するという選択肢もあるでしょう。
右下の特許も、実施される可能性が低いので、あまり価値はありません。
ただ、ごくごく低い確率ですが、将来誰かが実施をすることになれば、すごく役に立つ特許になる可能性があります。
従って、将来の技術動向が劇的に変わった!という場合などを想定して、保険のために持っておくという選択肢はありますね。
で、問題は左上に属する特許です。
例えば、「プロセスを構成要件に含んでいるけど、完成品からはそれが検証できない自社製品の製造方法」の特許などが挙げられるでしょう。
これは価値のある特許だと言えるのでしょうか?
(長くなりそうなので、続きは次回にまわします)
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